ダイエット中なのに、好きな食べ物を食べてもOK? そんな夢のような方法があるのなら知りたい!ダイエットを考えるとき、「太らないためのメソッド」と「痩せるためのメソッド」には違いがある、と言うのは、ダイエット外来のノウハウをまとめた書籍『好きなものを食べながら健康的にやせる帳消しダイエット』(日本実業出版社)の著者で、ハーバード大学医学部准教授、そして麻布医院院長の高(正しくは、はしごだか)橋弘さん。
まず、その違いを理解することが大事だという高橋さんに、それぞれのメソッドについて聞いた。
* * *まず、なぜ人は太るのでしょうか。
原因は2つ、「カロリー」の過剰摂取と「運動不足」です。
摂取するカロリーが、消費するそれらより多ければ太るのは当たり前。
よく「太って肉が付いた」と言いますが、その肉とは何でしょうか? 当然、筋肉ではなく、「内臓脂肪」や「皮下脂肪」といった「体脂肪」です。
そして、その「体脂肪」の実体は何かといえば、「中性脂肪」なのです。
従って、「太らないためのメソッド」は体の脂肪組織に中性脂肪を溜めない方法、「痩せるためのメソッド」は体の脂肪組織の中性脂肪を燃焼させる方法ということになります。
好きなものを食べても太らないためのポイント3つ太らないためのメソッドの第一は「食べる順番」。
野菜を最初に食べる「ベジファースト」は重要です。
ベジファーストにすると、糖質のGI値が下がる、脂肪の吸収が抑えられるなどのメリットがあります。
写真/GettyImagesしかし、さらに効果的なのは「スープファースト」です。
最初に野菜スープ、ポタージュ、みそ汁、なければコーヒーや緑茶でもいいので、温かい液体を飲むと「食事誘発性熱産生(DIT)」(後述)が誘導されて代謝が上がります。
ホットミルクでもOKです。
また、野菜、緑茶、紅茶にはカロリーを燃やす、燃焼系ファイトケミカルやビタミンも含まれています。
まずはスープから。
次に野菜、たんぱく質、最後に糖質といった順番で食べてください。
非常にシンプルですが、これが太らないための大原則。
どんなメニューでもこの通り食べれば効果が期待できます。
また、シンプルなので続けやすいのも利点です。
食事によって消費されるエネルギーを「食事誘発性熱産生(DIT)」と呼びます。
摂取した食品は、脂質では4%、糖質では6%、たんぱく質では30%が食後に熱に変わり消費されます。
そして、同じ食品を固形と液体状にして摂取して比べると液体状で摂取したときのDITがより多いことがわかりました。
これは、液体状の方が小腸まで早く届いて吸収されるので、より多くのエネルギーが肝臓で消費されて、DITが増えるのです。
例えば、ミルクを飲んだあと、赤ちゃんの体がポカポカ暖かくなるのはDITが誘導されているからです。
写真/GettyImages次に「食品のGI値を意識して、低GI値(血糖値の上がりにくい)のものを食べる」こと。
高GI値の糖質を食べると、血糖値が上がり、肥満ホルモンであるインスリンが分泌されて、過剰な血糖が中性脂肪に変換されるため、太りやすくなります。
量を気にせず食べられる優秀な低GI食品は、野菜、きのこ、海藻類など。
また、「甘くない糖質であるでんぷん」も消化されて糖になります。
従って、でんぷんを摂るときには、白米よりも食物繊維を含む玄米を、食パンやフランスパンよりも全粒粉パン、ライ麦パンなど、茶色っぽい穀物など、よりGI値の低い食品を選ぶのがポイントです。
写真/PAKUTASOそして、最後に、「量が少なくてカロリーの高い食べものに注意する」ことと「燃焼系のビタミンと燃焼系のファイトケミカルを含んだ食品を積極的に摂る」こと。
食品のカロリーはそれぞれ、脂質は1gで9kcal、糖質は1gで4kcal、タンパク質は1gで4kcalです。
牛肉は低カロリーでも、ステーキの脂身を食べると高カロリー食になります。
また、揚げ物は小麦粉やパン粉の衣が多くて、油がしみ込んでいるものは要注意。
例えば、から揚げは1個あたり80〜100kcalもあり、5個でご飯2杯分に相当します。
低カロリーでヘルシーな野菜や魚でも揚げ物には注意が必要。
好きなものを食べても、油のしみ込んだ揚げ物の衣やステーキの脂身などは捨てるのがオススメです。
写真/PhotoACまた、好きなものを食べるときは「燃焼系のビタミンと燃焼系のファイトケミカルを含んだ食品を積極的に摂る」ことも肥満の予防になります。
燃焼系のビタミンは糖質、脂質の代謝を助けるビタミンB1、B2、B6、ナイアシンなどで、海苔や唐辛子、まいたけなどに多く含まれています。
燃焼系のファイトケミカルはトマト、にんにく、ねぎ、玉ねぎ、らっきょう、しょうがなどの野菜、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒーなどの飲料、唐辛子、からし、マスタード、こしょうなどの香辛料に含まれています。
好きなものを食べたいときは、これらを追加することでカロリーを帳消しにしましょう。
食事で痩せるためのポイント3つ痩せるためのメソッドは「内臓脂肪」や「皮下脂肪」に溜まった中性脂肪を燃焼させる方法です。
いちばん大事なのが、「食間を空けて間食をしない」こと。
写真/GettyImages食事と食事の間を6時間以上空け、間食をしない。
食後3時間ほどすると血糖値が下がって空腹を感じますが、ここで食べるのを我慢すると、血糖値を保つために体内に蓄積された中性脂肪が糖質に変わり(これを「糖新生」と呼びます)、エネルギーとして消費されるので痩せることができるのです。
食間には、お水やお茶、コーヒーなど、無糖のものならいくら飲んでも構いません。
秋に丸々と太った熊やリスが冬眠中も生きているのは糖新生により中性脂肪から糖が作られるためです。
そして、春にはしっかり痩せて冬眠から目覚めるのです。
写真/GettyImages2番目は「よく噛む」こと。
人間の1日のエネルギー消費量のうち、約6割が「基礎代謝」、約3割が「活動時代謝」、残りの1割が食事に伴い消費される「食事誘発性熱産生(DIT)」です。
たかが1割といっても、3000kcalの10%にあたる300kcalを散歩で消費しようとすれば2時間、ジョギングでも30分はかかるのですから、有効に使うべきです。
よく噛むことで食べものが液体状になり、DITが誘発されやすくなり、逆に早食いだと、胃袋に食べものが固形のまま停滞して、DITがよく噛んで食べたときの20分の1にまで下がってしまうことが分かっています。
ですから、ゆっくりよく噛んで食べるだけで消費エネルギーが増え、ひいては痩せることにつながるのです。
写真/GettyImages3番目は「夜のでんぷんを控える」こと。
でんぷんは炭水化物の一種で、米、小麦、とうもろこしなどの穀類、じゃがいも、さつまいもなどのいも類に多く含まれ、ご飯、パン、麺類、お菓子類もそうです。
現代人は、総カロリーの約6割を糖質(糖類+でんぷん+アルコール)から、そして、総カロリーの約4割をでんぷんから摂取していますから、痩せるために夜はこれを控えることが重要です。
糖類やでんぷんは、脳や体を動かすエネルギー源ですので、体を動かす朝食や昼食にはいいですが、活動を休止する夜には控えるべき。
夕食は、野菜、たんぱく質を中心にして、ご飯やパンは少量に抑えることが大切です。
夜の糖類やでんぷんを控えることで、睡眠中も燃焼モードが続きます。
著者:高橋弘さんハーバード大学医学部内科准教授、セレンクリニック診療部長等を経て、2008年12月医療法人社団ヴェリタス・メディカル・パートナーズ理事長、2009年5月麻布医院院長に就任。
2010年4月麻布労働衛生コンサルタント事務所開設。
【データ】日本実業出版社『好きなものを食べながら健康的にやせる帳消しダイエット』著者:高橋弘販売価格:1296円 https://www.njg.co.jp/book/9784534055750/好きなものを食べながら健康的にやせる帳消しダイエット●がん予防、老化防止にも!ファイトケミカルは野菜スープが◎●食べても太りにくいと注目のパスタ!絶品でお手軽「まかないスパゲッティー」レシピ●食後血糖値上昇の抑制に効果的!わかめを使ったヘルシーレシピ2品●NGの野菜も!【痩せる食べ方Q&A】ベジファーストのダイエット効果は?●“ベジファースト”より“大豆ファースト”!4つのメリットと簡単レシピを紹介