販売員などが、職場でのハイヒール着用義務の廃止を訴える「#KuToo」運動が話題になっている。
確かに、一日中、ハイヒールを履いているのは、足に過度の負担がかかり、苦痛を感じる。
だが、視点を変えれば利点もあるという。
高いヒールを履いても、歩き方次第で美しく若返ることができる(写真/アフロ)ハイヒールを履いてしっかり立つには、体幹を支える【1】腸腰筋群、【2】内転筋群、背筋を整える【3】菱形筋群や【4】広背筋、腰から足にかけての【5】大臀筋・中臀筋、【6】下腿三頭筋の力が必要だが、ハイヒールで歩けば、これらの幅広い筋肉が鍛えられる。
そこで、美しく若返る健康的なヒール歩きのテクニックを日本ソワサンタンウォーキング協会代表の松尾多惠子さんに聞いた。
ダイエット効果や健康効果を高めるためには、「正しい靴を選び、正しく歩く」ことが必要だ。
自分に合う靴が見つかったとしても、果たして、長く歩けるかが問題だ。
「ハイヒールは女性を輝かせてくれる大切なツール。
正しい姿勢と正しい歩き方を身につければ、何才になってもハイヒールを履いて歩けますよ」松尾さんはそう力説する。
現在69才の松尾さんのハイヒール姿は、うらやましい限りだ。
69才にしてこの美脚!「ハイヒールに抵抗がある人は、【1】足が疲れやすい、【2】腰痛やひざ痛になりやすい、【3】転んで危ない、【4】外反母趾(がいはんぼし)など、足を痛めてしまうといったマイナス面が気になるようですが、これは大きな誤解。
ハイヒールそのものが悪いのではなく、選び方と履きこなし方、歩き方に原因があるのです。
正しく履いて歩く練習をすれば、悩みや心配は改善・解消されますよ」(松尾さん・以下同)とはいえ、誰もがいきなりヒールが高い靴を履きこなせるわけではない。
「ほとんどの人は、生まれてからなんとなく歩けているため、正しい歩き方を教わっていません。
歩くための筋肉の使い方をマスターし、その筋肉を鍛えた上でハイヒールを履けば、バランスを崩して転んだり、ふらつくこともなくなります」松尾さんが行うウオーキング教室では、最初に裸足で歩き方を練習した後、ハイヒールを履く。
このステップで、フラットシューズ一辺倒だった人が5cmヒールを、最終的には9cmヒールまで履けるようになっている。
「せっかく素敵な洋服を着ても、足元がウオーキングシューズでは締まりませんよね。
ハイヒールが履ける自分になるだけで、自信を持てるようになります」美しく履きこなす姿を想像しながら、ウオーキングレッスンを始めよう。
歩き方のクセを矯正するためにも、ふだんから裸足の状態で歩き方をチェックすることが大切だ。
「生活の中で、きちんと歩けているかを確認。
骨盤回しで体の軸を整え、つま先立ちでバランスよく全身の筋肉を鍛えれば、準備完了です」(松尾さん・以下同)次に、ヒールのある靴を履き、ひざを伸ばしてきちんと立てるか確認してから、歩く。
「高いヒールが苦手な人は、不安感からひざを曲げ、腰を引いて重心をとろうとします。
この状態で歩くのは無理。
もっと低いヒールから始めることをおすすめします」裸足歩きとヒール歩きの違いは、靴底全体を置くように着地させること。
また、歩く時は、ふくらはぎ、尻、背中の筋肉をしっかり意識して使うと、美しさが増す。
「数十分の外出でヒールの低い靴を履くことから始めて、徐々に時間を延ばし、ヒールを高くしていけばOKです」いつまでも堂々とハイヒールを履きこなせる体が、健康長寿には不可欠だ。
それでは早速、準備から実践まで、正しい歩き方を見てみよう。
準備1:裸足歩き【1】つま先をこぶし1つ分開け、左右のひざをつけて立ち、おへそを背中につけるようにお腹を凹ませ、壁に頭、肩(肩甲骨)、尻、かかとをつける。
【2】歩く時は、かかとから着地し、後ろのひざを伸ばして蹴り出すように意識する。
手も前から後ろに引くイメージで。
準備2:エクササイズ【1】骨盤回し足を肩幅に開いてひざを軽く曲げ、上半身を動かさないようにして前後左右に骨盤を回す。
骨盤のゆがみを調整・矯正する効果がある。
逆回しも同様に、各5回×3セット行う。
【2】つま先立ち裸足になり、上記の正しい立ち姿勢をとり、5本の指に体重をしっかりのせてつま先立ちをする。
10回から始めて、毎日30回が目標。
脚の内側、親指の付け根を意識して行う。
実践1:ヒールのある靴で立つ方法【横】【後】実践2:ヒールのある靴で歩く方法【1】きちんと立った姿勢から、左足を踏み出す。
右足に体重がのっていることを確認し、内股や外股にならないようひざをまっすぐ前方に向ける。
足先だけでなく、腰から体重を移動する。
【2】3cmヒールまではかかとから、5cmヒール以上は、かかととつま先が同時に着地するように歩く。
そっと足を下ろすようにすれば、靴音が大きく響くことなく、エレガントに歩ける。
【3】着地した左足に体重をなめらかに移動させ、左足と体の軸が一直線になるようにする。
残った右足は、ひざを伸ばして体を前に送り込むように意識し、つま先で蹴り出す。
★ここがポイント!後ろに残った足から尻にかけて一直線になるようにひざを伸ばす。
腕も後ろに引くように振れば、後ろ姿が美しくなる。
★これはNG!●ひざ曲げうつむき型筋力がなくなってきたシニアに多い。
重心の安定を図るために骨盤を後ろに倒してしまい、この姿勢に。
しっかり立つ練習を、ひざを伸ばすよう意識して。
●胸張りでっちり型体重がつま先寄りになると上半身が前のめりになり、姿勢をよくしてバランスをとろうとして胸を張り、腰を反らせることになる。
このまま歩けば腰痛の危険が。
教えてくれたのは:日本ソワサンタンウォーキング協会代表・松尾多惠子さん1950年生まれの69才。
100才までハイヒールを素敵に履きこなす、元気で美しい大人の女性を増やそうと『100歳ハイヒール倶楽部』を主宰。
撮影/浅野剛 イラスト/クリタミノリ※女性セブン2019年8月8日号●5才どころか10才若返る!立ち方、歩き方、おじぎの仕方、スマホの持ち方を指南●ウオーキングで身体を壊す人増加中!靴により歩き方変えるのが◎●歩くだけで美しく痩せる!バストアップや美尻効果も期待できる「ポスチュアウォーキング」●1日30分でOK!美痩せにつながる「ウォーキング」のコツ●ノルディック・ウォーキングがすごい!その効果と歩き方&ポールの持ち方など基本を解説