お腹が空いていないのに、ついスイーツを食べたり、スナック菓子をつまんだり…。
ダイエットによくないとわかっていながら誘惑に勝てない、その食欲の原因は生活習慣にあるのかも。
写真/GettyImagesそこで、美容や健康のための食生活について、いろいろなメディアで発信している栄養士の篠原絵里佳さんに、食欲と栄養の関係について話を聞いた。
「単純な嗜好の問題もある」ということが前提だけれど、特定のものへの食欲が強いときに不足している可能性がある栄養素についての解説と、どうしても食べたいときやつい食べてしまったときの対策を教えてもらった。
【目次】・食欲がおさまらない理由5つ・生クリームやケーキ、パンが食べたいとき・チョコレートが食べたいとき・甘いものをつい食べてしまう人のリカバリー方法・脂っぽいものが食べたいとき・脂っぽいものをつい食べてしまう人のリカバリー方法・その他の味覚による体からのサイン食欲がおさまらない理由5つ写真/アフロ「お腹いっぱい食べても食欲がおさまらないのは、さまざまな理由が考えられます」と語る篠原さんは、大きく5つの原因を教えてくれた。
【1】糖質など三大栄養素の不足三大栄養素の炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質が不足しているとき。
特に糖質が不足していると、甘いものやスナック菓子など糖質の多い間食を無性に食べたくなる。
これはご飯等の主食を抜いている人によく見られる現象で、糖質が必ず必要な臓器もあるため、糖質が不足すれば「甘いものが食べたい、飲みたい」という衝動が発生しやすい。
また、血糖値が上昇すると満腹感を得ることができるが、炭水化物(糖質)を過度に控えると血糖値が上がりにくくなり、満腹感が得られにくくなることも食欲の増加につながる。
一方、炭水化物(糖質)に偏った食事で他の栄養素が足りないと、血糖値が急上昇しやすく、急低下(血糖値の乱高下)が起こる。
すると、血糖値が低下しすぎてしまい、血糖値を上げようとして、甘いのものが食べたくなる。
これを繰り返すことを糖質依存という。
また、たんぱく質は食欲に関するさまざまなホルモンや神経伝達物質の材料になるため、たんぱく質やたんぱく質の代謝にかかわるビタミンB群が不足すれば、食欲にも影響が出てくると考えられる。
【2】早食い血糖値の乱高下が起こりやすいため、血糖値が低下しすぎることで、甘いものなどを食べたくなってしまう。
また、満腹中枢は食事をしてから20分経過した頃から働き始めるため、早食いをすると満腹感を感じるまでに時間がかかる。
【3】生理前のホルモンによる影響黄体ホルモン(プロゲステロン)が増加することで、食欲が増す。
【4】睡眠不足によるホルモンの影響睡眠不足になると、食欲増進するホルモン「グレリン」の分泌量が増え、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が減少する。
特に炭水化物(糖質)やポテトチップスなどのジャンキーなものが食べたくなる、という報告もある。
【5】食べたときの快感がクセになっている甘いものなどを食べたときに「おいしい」という快感を得ることで、β-エンドルフィンやドーパミンといった神経伝達物質が放出されるため、脳が快感を覚える、という説もある。
生クリームやケーキ、パンが食べたいとき写真/アフロ◆食事制限などによるカロリー不足篠原さんによると、高糖質・高脂質(高エネルギー)のものを求める場合、偏った食事が原因ということも考えられるという。
「食事からの糖質や脂質の不足によってエネルギーが不足すれば、体がエネルギーを求めて食べたくなる可能性があります」(篠原さん・以下同)日々の食事内容を確認して、主食(ご飯・パン・麺)を抜いたり、減らしすぎたりしていないか、脂質を減らしすぎていないか、野菜だけの偏った食事になっていないか(主食や肉・魚・卵・大豆製品等の主菜を減らしすぎていないか)、振り返ってみて。
◆脂質の代謝を促すビタミンB2不足また、主食や主菜をとっていて脂質も適度に食べている、というときは、糖質や脂質の代謝を促すビタミンが不足している可能性も。
「ビタミンB2をしっかり摂れているか確認しましょう。
ビタミンB2は糖質、脂質、たんぱく質の代謝に使われ、中でも脂質の代謝を促します。
納豆、牛乳・乳製品、青魚、レバー、卵、きのこに豊富な栄養素なので、これらの食品を毎日摂っていないときは、ビタミンB2不足で、それにより脂質の代謝が滞って脂質を欲している可能性があります」チョコレートが食べたいとき写真/アフロチョコレートが食べたくなる=マグネシウム不足とも言われるけれど、篠原さんによると実はこれは都市伝説で、エビデンスはないそう。
◆マグネシウム不足の症状について「マグネシウムが不足して現れる症状は、チョコレートが食べたい、という症状ではなく、集中力の低下や記憶力の低下、人によっては貧血等が挙げられます。
長期的に不足すれば、循環器系の疾患を招く可能性や、疲れやすい、だるい、食欲不振、イライラ、頭痛などの不調、またエネルギー代謝の低下によって太りやすくなったり、月経前症候群の症状が出たりすることも挙げられます。
ちなみに、マグネシウムが多い食品はチョコレートよりも種実類や豆類、大豆製品になります」◆糖質を求めていることも多いチョコレートが食べたくなるのには、人によってさまざまな理由があるという。
日頃の食事内容や生活習慣の中に隠されている場合もあるので、これといった原因を一つ挙げることは難しいそう。
「例えば、食事からの糖質が不足している、血糖値が低下している、睡眠不足により糖質を摂りたい欲求が強まっている、運動量が多くて食事からの糖質量が不足しているなど。
また、さまざまな要因が複合的にかかわっていることも考えられます」もちろん単純にチョコレートが好き、というケースも多く見受けられるという。
甘いものをつい食べてしまう人のリカバリー方法写真/GettyImagesシンプルに好きだから食べてしまう、という人など、甘いものへの欲求を我慢できなかったときにはどうしたらいいのかも教えてもらった。
・日頃から糖質の代謝を促すビタミンのビタミンB1が豊富なものを食べるようにする。
豚肉(赤身)、レバー、玄米など精製度の低い穀類、うなぎ、豆類に多く含まれている。
・どうしても我慢できないときは、甘いものと一緒に牛乳(ビタミンB2が豊富)を飲んだり、食物繊維の一種である難消化性デキストリン入りのドリンクを飲む。
・体をいつも以上に動かしてエネルギーを消費する。
・食べた翌日は菓子類の甘いものを控える。
脂っぽいものが食べたいとき写真/GettyImages◆揚げ物が食べたいとき「嗜好以外の可能性としては、揚げ物が食べたい場合もエネルギー不足が続いていることが考えられます。
また、ビタミンB2が不足し油脂が代謝されづらくなっていると、体がエネルギー不足と勘違いする場合も」ついつい揚げ物ばかり食べてしまうというときも、納豆、牛乳・乳製品、青魚、レバー、卵、きのこといったビタミンB2が多い食品をとるように心がけてみて。
◆焼肉・ステーキなどを食べたいときステーキなどを求めている場合は、鉄不足の可能性もあるという。
「鉄不足の場合は、鉄が豊富な食材をとり入れることが大切ですが、エネルギー不足やたんぱく質不足でも、貧血を招きます。
主食や肉・魚・卵・大豆製品などの主菜でエネルギーを確保しながら、鉄が豊富な食材をとり入れることが大切です」鉄が豊富な食材は、レバー、牛肉等の赤身肉、カツオやマグロ等の赤身魚、あさりや赤貝等の貝類、厚揚げ・納豆・豆乳等の大豆製品、ほうれん草等の青菜、卵など。
「鉄は吸収率の悪い栄養素のため、毎日コツコツと摂り続けることが大切です。
植物性食品や卵に含まれる鉄は吸収率が特に悪いですが、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率がよくなるので、食後の果物はオススメです」また、氷を食べたくなる氷食症も鉄不足による貧血の可能性が高いので、同様の食生活を意識して。
◆脂身が食べたいときバラ肉やベーコンなどの脂身を欲している場合は、エネルギー不足が続いている可能性が。
日々の食事で油脂を減らしすぎていないか、食事からの糖質(ご飯、パン、麺など)を減らしすぎていないか、また、ビタミンB2が摂れているか確認を。
脂っぽいものをつい食べてしまう人のリカバリー方法写真/PhotoAC篠原さんが教えてくれた、脂っぽいものをたくさん食べてしまう人のリカバー方法はこちら。
・ビタミンB2が豊富な食材を食事にとり入れる。
・脂質の吸収を抑えたり、脂肪の排出を増やしたりする効果が期待できる烏龍茶ポリフェノールを豊富に含む烏龍茶などを食事時に飲むことを習慣にする。
・食べた翌日は脂質が多いものを控える。
その他の味覚による体からのサイン写真/アフロ◆しょっぱいもの・辛いものストレスがかかっている可能性が考えられるので、ストレス解消法を見つけるのも大切。
「しょっぱいものをたくさん食べてしまったときは、塩分の排出を促すカリウムが豊富な食材の果物、根菜類、緑黄色野菜、海藻類、豆類をしっかりとるようにしましょう」ただし、腎疾患がある場合は医師の指示に従うこと。
◆すっぱいもの「疲労している可能性があります。
酸味に含まれるクエン酸を摂ることで、疲労回復効果が期待できます」疲労回復のためには、炭水化物(ご飯、パン、麺)やビタミンB1(豚肉、雑穀、豆類、レバー等)も摂るのが◎。
最後に、食事は思考や嗜好の影響が強く出る傾向があるため、「●●が食べたい=●●という栄養素が不足している」とは限らない。
そのため、決めつけすぎに慎重に判断を。
判断できないときは専門家に相談することをおすすめする。
教えてくれた人:篠原絵里佳さんしのはら・えりか。
管理栄養士。
Health&Beautrition主催。
日本抗加齢医学会認定指導士、睡眠改善インストラクター、野菜ソムリエプロ、ダイエットスタイル認定トレーナーなどの資格をもつ。
総合病院、腎臓・内科クリニックを経て独立。
長年の臨床経験とアンチエイジング(抗加齢)医学の活動を通して、体の中から健康と美を作る食生活を見出し、わかりやすく発信することを得意とする。
『食べても太らない簡単スゴ技』(枻出版社)など、本の監修も多く手がけている。
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