50代といえば、すでに子供が巣立った人もいれば、まだまだ子育て中という人もいる年代でしょう。
いずれにしても、ある程度成長した子供との付き合いは意外と難しいもの。
幼い頃と同じように接して、子供のやることにいちいち口を出すと煙たがられてしまうし、かといって何も言わないのは無責任なのでは…と悩ましいところです。
Ph/GettyImagesそこで、精神科医の水島広子さんと一緒に、子供との付き合い方について考えてみましょう。
反抗的になる思春期の子供にどう接したらいいのか?「思春期というのは、10代から20代初めくらいのことを差しますが、50代だとその年代の子供を持っている人も多いでしょう。
思春期は大人になるためのプロセスですから、親もそれに応じて付き合い方を変える必要があります」(水島さん・以下同)◆思春期の子供は、あえて大人として扱うことで責任感が育つPh/GettyImages例えば、赤ちゃんの頃は何でも親が先回りして、子供が快適に過ごせる環境を作っていくものですが、思春期の子供にはあえて「大人」として扱うことが重要だといいます。
「片付けを例にしてみましょう。
幼い頃は『片付けなさい!』と言っていたのを、思春期の子供には『共有スペースは散らかさないでね。
片付けてくれる?』と言い方を変えるのです。
親としてではなく、大人同士として関わっていく方が、それぞれの心の健康のためにもプラスで、子供にも大人に必要な責任感が育ちます」◆思春期は親と距離をとり、子供なりの価値観や人間関係を作る時期そもそも思春期とは、どんな時期なのでしょうか。
「もともと、子供は親の価値観や人間関係の中で暮らしていますが、思春期になると、親と距離をとりながら、自分なりの価値観や人間関係を作っていきます。
それが大人になるための大事な過程なのです」Ph/GettyImagesしかし、ひとりっ子も多く、きょうだいが少ない現代の家族環境では、母親と子供の関係性も密になる傾向にあります。
母親と子供の距離が極端に近く、『一卵性親子』といわれるようなケースも珍しくありません。
「一卵性親子の場合、母親の方が『お母さんをかまって』という強いフェロモンを出していることが多く、子供の立場としては『一緒にいてあげないと…』という気持ちになってしまうのです」◆健全な成長のためには、反抗期を経験することも必要しかし、さまざまな診療体験から、「親子関係では反抗期を経験することが必要だ」と水島さんは言います。
「精神疾患を患う患者さんの話を聞くと、思春期に反抗期を経験していない人がとても多いんです。
反抗期があったから病気にならないわけではありませんが、反抗期を経験することは子供の成長においては必要なことだと思います」とはいえ、これまで甘えていた子供が自分の手を離れてしまうと思うと、親としては寂しいのは当然のこと。
子供が自立することで母親が憂鬱や不安を感じる、「空の巣症候群」という言葉もあるほどです。
「でも、それに耐えるのが親の愛。
子供も思春期になると、友達や先輩などいろいろな付き合いができるので、親の言う通りにはやっていられません。
親も、それは子供がちゃんとした大人になる過程だと思い、見守ってあげましょう」進学や就職、結婚などの節目に子供にアドバイスするコツ日常的なことはなるべく口をつぐむとしても、進学や就職、結婚などの人生の大事な局面では、つい親の意見を押し付けたくなり、「こっちの学校の方がいいわ」「あの人は結婚相手としては気に入らない」などと感情的になり、子供に嫌な顔をされるケースも多いでしょう。
Ph/GettyImages◆子供の考えを尊重した上で、人生の先輩としてアドバイスする「まずは、子供の話を否定せずにじっくりと聞いてあげることです。
親からしたら『とんでもない!』と思う選択肢でも、子供なりによく考えていることも多いのです。
その考えを尊重した上で、『人生の先輩としては、ここが心配なんだけど、どうかな?』と、対等な意識で問題提起をしてあげましょう」◆何があっても子供の味方であることを伝えるPh/GettyImages生きていれば、いろいろな悩みや挫折はつきもの。
そんなときにも、「言った通りにしておけばよかったのに…」という態度はNGで、「いつでもあなたの味方ですよ」という姿勢を示してあげることが大切です。
「そんなことを無条件で言ってあげられるのは親くらいなもので、子供にしたら本当に心強いものです。
そして、子供が独立してしまうと、親としては寂しい思いをするかもしれませんが、ここからは自分の人生を楽しむ時期です。
趣味や旅行など人生を楽しんでいる母親の姿を見れば、子供も安心するでしょう」親にしてみれば、子供はいつまでも子供ですが、上手に子離れをして、子供の成長に応じた付き合い方を実践してみてください。
教えてくれたのは:精神科医・水島広子さん精神科医。
慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。
慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)。
日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。
2000年6月から2005年8月まで、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。
『50代からの人間関係』(PHP研究所)、『夫婦・パートナー関係もそれでいい。
』(創元社)、『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)など著書多数。
http://www.hirokom.org/50代からの人間関係取材・文/青山貴子●何もしない夫を“家事夫”にするカギは「頼る」と「ほめる」【50代からの人間関係のコツ】●「もう年なんだから」はNG。
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