感染リスクがあるのは人間だけなのでしょうか――。
ご家庭で犬や猫を飼っている人の不安や疑問について、獣医師の先生に解説していただくシリーズ。
Ph/GettyImages今回は、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症についてです。
【目次】犬にも猫に新型コロナの死亡例は?犬や猫から人間への感染リスクはあるのか?ペットを預ける際はヒト・ヒト感染に注意新型コロナ患者のペットを預かるプロジェクトも犬にも猫に新型コロナの死亡例は?新型コロナウイルス感染症の感染者数は世界で約1億2800万人(2021年3月末現在)となり、今も増え続けています。
なかなか出口が見えないコロナ禍ですが、犬や猫もこのウイルスに感染するのでしょうか。
獣医師の山本昌彦さんに聞きました。
Ph/GettyImages「人間から犬や猫への感染は、確かに報告されています。
飼い主さんが新型コロナウイルス感染症を発症したので、その愛犬や愛猫にPCR検査を実施すると陽性だったというケースがありました。
ただし、感染しても犬の場合はほぼ無症状。
猫も大半が無症状で、一部に軽度の呼吸器症状が見られる程度です。
それも重症化することはなく、犬、猫ともに現時点では死亡例はありません」(山本さん・以下同)Ph/GettyImages一般に、インフルエンザウイルスなどには種特異性(宿主特異性)があり、鳥には脅威でも他の動物には伝播しにくいなど、種によって感染しやすさがまるで違うことがあります。
これは、ウイルスが結合しようとする細胞表面のレセプター(種類、分布)が、種によって異なるためです。
「新型コロナウイルスも、この種特異性が高いのだと推測されます。
簡単にいえば、新型コロナウイルス感染症は“人間の病気”だということです」犬や猫から人間への感染リスクはあるのか?犬や猫は新型コロナウイルスに感染はしても、ほとんど重症化しない――。
飼い主さんには朗報ですね。
Ph/GettyImagesそれでも、感染した犬や猫から人間にウイルスを媒介してしまう可能性が気にかかりますが、これも「ペットから人間に新型コロナウイルスが感染したという例は現時点で報告されていません」とのことです。
ちなみに、新型コロナウイルスの生存期間は空気中で約3時間、金属の表面では4時間程度、人の皮膚で9時間前後、段ボールやプラスチックの表面では1日から2日ほどだといわれています。
「犬猫の体表で実験した例は見たことがありませんが、これらから類推すると半日程度だと思っていいのではないでしょうか」ペットを預ける際はヒト・ヒト感染に注意それでは、飼い主さんが新型コロナウイルスに感染し、入院が決まった際やそうなる可能性に備えて、愛犬や愛猫をペットホテルや友人宅などに預ける場合、どんなことに注意すべきでしょうか。
Ph/GettyImages「ペットから人間へ感染する可能性はきわめて低いと考えられるので、注意すべきは人間から人間への感染です。
飼い主さんがペットを入れたキャリーケースを玄関前に置いておくなど、預かり先のかたが飼い主さんと顔を合わせずに済む受け渡し方法を選びましょう」また、東京都獣医師会が策定したガイドライン(https://www.tvma.or.jp/public/2020/06/ippannmuke.html)では、ペットの体表についたウイルスを洗い流す、不活化させる目的で、預ける前にシャンプーしておくことを推奨しています。
「シャンプー剤を使って洗うのはウイルスの除去や不活化に有効です。
ただし、マスクやゴーグル、手袋、防護服(やその代わりになるエプロンなど)といった十分な装備なしに洗うと、かえって感染リスクを高めることになるので、しっかり対策しながら洗うようにしましょう。
シャンプー剤でウイルスが不活化する前に、ペットが体を揺すってウイルスが飛び散るようなことも考えられるので、できるだけ屋外で洗いたいですね」新型コロナ患者のペットを預かるプロジェクトもそもそも、誰に預かってもらうのかなど、自身が感染した場合の対応を前もって考えておくのも大切なこと。
頼れる人が周りにいない場合には、近隣のペットホテルなど事業者で対応しているところがあるかどうか、調べておくといいでしょう。
Ph/GettyImagesペットホテル以外でも、預かりを始めた団体があります。
ペット保険会社を子会社に持つアニコムホールディングスでは、昨年4月から、新型コロナウイルス感染症にかかった人のペットを無償で預かる「#StayAnicom」プロジェクトに取り組んでいます。
(ただし、申し込み状況などによっては預かれないケースも)。
→プロジェクトの詳細はコチラ(公式サイト)2021年3月時点で、アニコムが預かった犬は55頭、猫は34頭、うさぎは2羽、ハリネズミ1頭。
同社によれば「これまでに預かった犬猫の中に、陽性の子が数頭いましたが、みんな目立った症状はなく、PCR検査ではじめて陽性だとわかりました」(同社広報ブランディング課長の塩澤みきさん・以下同)ということです。
Ph/GettyImagesアニコムでは預かった初日と翌日、そして1週間後にもPCR検査を実施し、陽性のペットは隔離(単頭)飼育をして経過を見守り、PCR検査で陰性を確認してから飼い主さんの元へ返しているそうですが、「飼い主さんが退院されて体調を回復されるまでには、どの子も陰性になっていますね」と。
やはり、私たち人間がしっかり予防に努めて、愛するペットに寂しい思いをさせないようにしたいですね。
教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん獣医師。
アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。
東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。
動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。
https://www.anicom-sompo.co.jp/取材・文/赤坂麻実●犬や猫の花粉症事情|柴犬やシーザーはリスク高い?散歩やシャンプーなどの対策法●新型コロナの影響で収入が減った…年金、税金、光熱費などをサポートしてくれる制度●コロナ禍の都会でリゾート気分!国立競技場の目の前で自然とアートの旅「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」