【63歳オバ記者のリアル】92歳母ちゃんが施設に入所|コロナ禍の現実を思い知る
バツイチ独身のライター・オバ記者(63歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで”アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。
223回目となる今回は、入退院を繰り返していた母ちゃん(92歳)が施設に入所することになった話。
オバ記者はコロナ禍の現実をまざまざと思い知らされるのだった。
* * *三度よみがえった!?母ちゃん「もしこのまま会えないとしたら、最後の瞬間はどんな顔していたっけ」2週間前、意識が混濁した母親(92歳)が入院してから、何度そんなことが頭をよぎったか。
コロナ禍の今、親が入院したら骨になるまで会えないんだなと、ここのところ思い知らされっぱなし。
ところがわが母ちゃんは、三度よみがえって家に戻ってきたの。
坐骨神経痛を悪化させて入院した前々回は、若い看護師のTくんと楽しくリハビリをして歩けるようになって帰宅。
その数日後、今度は肝硬変がすすんで脳にアンモニアがまわり、その結果、意識が遠のいて倒れて入院。
さすがに今度という今度はダメだと思ったら、また帰ってきたの。
「もう、ここに来ちゃダメだよ」と看護師さんに見送られたって、帰宅した夜、母ちゃんはノンアルコールのビールを片手にこんな顔。
昭和3年生まれのしぶといことといったらない。
だけど入院する前に全てがもどっているかというと、そんなことはなくて、最大の違いはトイレだ。
昼はどうにかこうにか、杖をついてトイレに行くけど、深夜、ベッドから体を起こして、5m歩くのさえきつい。
前回、退院してきた夜は、3度起こされて、付き添った。
そして今回はベッドの横のポータブルトイレに用を足す。
最初は母親の紙おむつにギョッとして、次はそれを上げ下ろしすることにためらい、そしていまは何とも思わなくなった。
排せつという最大のプライバシーを母ちゃんは手放したんだなと思うと悲しくなるけど、そんな感傷は何の役にも立たないのもまた現実だ。
美容室に行きたがった母ちゃんトイレに補助が必要となったことを母ちゃんがどう思っているのかは、わからない。
それより朝、鏡をのぞいては、「髪の毛、こんなに伸びきって、真っ白になっちゃって」と嘆く。
今回、10日入院して、一度もお風呂に入れなかったんだって。
「風呂、入るか?」と聞くと、「頭も洗いてえ」と言う。
3連休の初日、ポカポカ陽気だったので、昼日中、母ちゃんの望む通りに風呂に入れて、ヘアマニキュアで髪を染めてやったら、「明日、カットしたい」だって。
もう会えないかと覚悟していた私がバカみたいだ。
サングラスをかけた母ちゃんで、送り迎え付きの美容院でカットして帰ってきたら、いつもお世話になっている親せきのサチコさん(80歳)と並んでこの笑顔。
実はこの日、母ちゃんはどうしても果たしたいことがあったのよ。
それは末弟(52歳)の車で40分のところに住む親せきのカズコさん(84才)に会いに行くこと。
助手席に座って「まぶしい」というので、末弟がかけさせたんだけど、「香港の悪いおばあさんみたい」と大笑い。
母ちゃんに写真を見せたら「あはは」と笑う。
痛い、かゆい、だるいという愚痴の間に、この笑顔はずるいよ。
GoToトラベルはおろか、近所の温泉に行くのもあきらめて付き添っている現実を一瞬で吹っ飛ばすもの。
ところがカズコさんの家に着くと、母ちゃんの様子がヘン。
ソファーに座っても顔の表情がなくなって話しかけられても反応がないんだわ。
薬で肝硬変による意識障害を抑えているけど、それにも限界があるということ? しばらくして、ふたりは手を取り合って昔話を始めたけど、体力の低下はどうしようもないのよね。
施設に入ったらなかなか会えない…来月早々、母ちゃんは介護老人保健施設に入る。
幸運にも個室がひとつ開いていて、知り合いも何人かいるようだ。
「加波山も筑波山も見えて、いいとこだよなあ」と末弟はいうけど、入所したらいよいよ母ちゃんの様子はリモートで知らされるだけになるんだよね。
そんなことを思いながら、常磐線の車窓から見た故郷の風景は、いつになく遠く、現実からかけ離れたものに見えた。
オバ記者(野原広子)1957年生まれ、茨城県出身。
『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。
同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。
バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。
一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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