【63歳オバ記者のリアル】私の理想郷、秋葉原に住んで5年…きっかけはメイド喫茶
バツイチ独身のライター・オバ記者(63歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで”アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。
236回目となる今回は、オバ記者が愛する街「秋葉原」について。
* * *秋葉原のイメージは「ほどほどに売れている芸人」茨城から常磐線で上京して46年。
いろんな街に住んだけど、住んで5年経つ秋葉原は、吸い寄せられた街、としか言いようがないのよね。
昭和のころは電気街に家電やパソコンを買いにきたり、オタクの街として定着してからは、ヘンな店の取材に来たりしたけど、まさか住むとは思わなかった。
そりゃそうだって。
住みたい街ランキングに絶対に入らない街だもの。
で、街の印象をひとことでいうと、ほどほどに売れているお笑い芸人、かな。
名前を聞くと「ああ、秋葉原ね」とつい笑っちゃう。
でも実態はよくわからない。
あの日まで私もそう思っていたもの。
メイド服に着替えてカーテンを開けると…そんな秋葉原をいいなと、最初に思った日のことは、強烈に覚えている。
場所は『ドン・キホーテ』のメイド服売り場の更衣室の前なの。
何、そのピンポイントな設定は、と思うだろうけど、まぁ、聞いて。
女性セブンの企画で、「オバ記者、メイド体験」をやることになり、『ドン・キホーテ』にメイド服を買いに来たの。
サイズが豊富とは聞いていたけど、さすがだね。
S、M、L、XLと、なんとメンズ! 肩幅をメンズに合わせたメイド服が、売っていたのよ。
で、当時、48歳だった私はXLの一枚を選んで、試着室で着替えて、カーテンをシャーッと開けた。
売り場は人もまばらだったから、大丈夫だろうと油断したの。
ところがそこに高校の制服を着た、試着待ちの女の子がいた。
バツが悪いったらない。
とっさに「どう、似合うかな?」と聞いたら、すかさずよ。
「とってもお似合いです。
すてきです」とこう言ったのよ。
彼女の高校生らしくない静かなたたずまいと、底抜けの善意に、オタクの真髄を見た、なんていうとウソくさいけど、その日を境に、なんでもありの秋葉原はちょっとした気分転換の街になって、ひとりぶらつくようになったの。
そしていくつかの偶然が重なって、住むことになっちゃった。
街のいたるところから電車が見えるで、気づいたんだけど、秋葉原って街のいたるところから、走っている電車が見えるのね。
しかも、真横だったり、ななめ上だったり、高架上にも!”鉄ちゃん”にとって、これがどれほど心の慰めになるか。
老舗洋食店の肉の万世で、ハンバーグ定食を食べながらひとり中央線を見下ろしたていると、幸福って2056円だったのねって(笑い)。
えっ? 理解不能? だよねー。
私だってアニオタの萌えどころはちっともわからないし、パソコン街で部品を見ている人の気持ちだってそう。
オーディオマニアのこだわりどころも、ゲーム命の人もロリオタもそうよ。
わかんないって。
そんなわかんない人同士が、理解できないまま、同じ空間にいて、まったりしている。
私もそうだけど、世の中の異物にとって、ここはある意味、理想郷だと思う。
あとひとつ、いいなと思うのは、リュックを背負った趣味仲間の男たちがつるんで、楽しくそうに歩いていること。
女同士なら、どこにでもいるけど、意外と見ない光景よ。
今のところ、”ついの住処”とまでは考えてないけれど、この街が面白いと思える間は住みたいと思っているんだ。
オバ記者(野原広子)1957年生まれ、茨城県出身。
『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。
同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。
バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。
一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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