【63歳オバ記者のリアル】老健に入所中の母ちゃんが高熱…夕焼けに感じたある気持ち
バツイチ独身のライター・オバ記者(63歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで”アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。
237回目となる今回は、老健(介護老人保健施設)に入所している92歳の母ちゃんについて。
* * *母ちゃんに高熱が出た「不要不急の外出はおやめください」「県をまたいだ外出はお控え下さい」駅に行くとこのアナウンスが昼夜、流れている。
そんな中、茨城の弟から「姉ちゃん、どうする?」とメールがあった。
昨年の暮れから2か月、茨城の老健に入居している母親とはコロナ禍で会えない。
その代わり、月に一度、リモートで会話をしていることは、ここに何度か書いた。
しかし、昭和3年生まれの母ちゃんは、リモートに納得していない。
「ケッ、こんな子供だまし、やってられっかい!」と思っている。
とてもよくしてくれる施設の職員さんの手前、口にこそ出さないけど、「じゃあ、またな」って、すぐに話をやめたがるんだもの。
その母ちゃんが、高熱を出して、体中に発疹が出た。
つい最近まで「風邪? ひいたことないなぁ。
そら、ゾクゾクとしたことはあったよ。
でも、そんなの、ひと晩寝れば治っちまうべな」と言っていた、人間離れした体質をもっていた母ちゃん。
発熱したことは、私が覚えている限り一度もない。
生まれて初めての38.2度だ。
もうすぐ93歳になる老婆が熱を出そうが、なんならあちらの世界に旅立とうが、コロナ禍で、別にいいんじゃね。
そんなことで不要不急の外出をするな、という意見はよくわかる。
よくわかるけど、身内の感情は別なんだよね。
何かが違う母ちゃんの様子に動揺して転倒聞けば、母ちゃんは診察のため、別の専門病院で検査することになり、弟は仕事を休んで送り迎えをするのだそう。
それで、私も病院に行って駐車場で車に乗ったままの母ちゃんと、数分、話した。
顔がむくんで、目は半分も開いていない。
「かゆいのは、シャンプーと体洗うのがいっしょに入ったのを使ったからだよ」と、車の窓越しに説明する口調は、見た目よりシッカリしているけど、何かが決定的に違う。
老健に入居した日は普通に笑っていたのにと思うと、正直、動揺した。
どのくらい動揺したかというと、母ちゃんと会った直後、ドライバーをかって出てくれた弟の妻と話しながら、真新しい点字ブロックの道に足を乗せたとたん、体が道路に向かっていったの。
「あ、転んだ!」と思ったかどうか、幸い空いていた両手をついた。
顔もついた。
鼻が痛い。
口の中が痛い。
あっ、口から血が出た!「大丈夫?」と義妹から聞かれ、「うーん、たぶん大丈夫」と言いながら、しばらくして立ち上がった。
口の中は大して切れていないし、鼻の痛みもそう。
とはいえ、転んだショックは想像以上に大きくてね。
母ちゃんもトシなら、私もトシ。
人の命には限りがあるんだなと、こんな夕景を見ていたら、シーンとした気持ちで納得しちゃった。
秋葉原の自宅から一歩も出なかったその翌日と、翌々日の2日間、私は秋葉原の自宅から、一歩も出なかった。
転んだときに体を左腕で支えたからか、筋肉痛があるし、体のバランスが崩れたのか、1時間起きていると横になりたくなるの。
それでもお腹だけはすくので、茨城の物産店で買った豚の頭肉とブロッコリーを入れたカレーを作り、筑波産の鶏もも肉で、玉ねぎソースのステーキを作った。
ふらふらしていた自分の体の軸がようやく自分にもどってきたのは、3日目のことだ。
朝起きたときから、体が軽いんだよね。
その日は原チャで約40分の友人の家まで行く約束をしていたの。
バイクっていいね。
キラキラ光る隅田川を渡るときは思わず、唐草模様のマスクの下で、「は~るの~、うらぁあらぁ~の~」と、歌っちゃった。
春はすぐそこまで来てるーーといいんだけどね。
オバ記者(野原広子)1957年生まれ、茨城県出身。
『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。
同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。
バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。
一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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