食欲がおさまらないのはなぜ?その仕組みと食欲を抑えるカギを握る腸内環境
「お昼にからあげ定食を食べたのにまだお腹がすいている」「ときどき、甘いものが欲しくて仕方がなくなる」「イライラを抑えるためにドカ食い」これらは、脳をだませばすべて解決! 最新研究に基づくメソッドを大公開。
食欲コントロールのカギは脳と腸!?(写真/アフロ)《お腹回りの脂肪が多い人ほど、脳が萎縮しやすい》衝撃的な調査結果がイギリスのラフバラー大学の研究チームによって発表された。
同チームは約9600人分のBMI(身長と体重から算出される肥満度を表す指数)に加え、ウエストとヒップ回りの数値を調べて脳をMRIで撮影。
食欲のコントロールが痩せるための近道そのデータを解析したところ、BMIとウエスト・ヒップの数値の両方が最も高いグループは脳の灰白質の容積が最も小さいという結果が出たのだという。
つまり、肥満は糖尿病など生活習慣病の原因になるだけではなく、認知症に代表される脳の病気の原因になりかねないということだ。
しかし、わかっていても成功するのは至難の業なのがダイエットだ。
実際、「株式会社シタシオンジャパン」が2014年に行った調査によれば、女性の8割がダイエットの失敗経験を持つという。
「ダイエット・コレステロール外来」で多くの肥満に悩む患者を指導し、自身も25kgの減量に成功した工藤内科副院長の工藤孝文さんは、過食の原因をこう一刀両断する。
「太っている人の9割は“食べすぎ”なんです。
つまり、食欲をコントロールすることこそが減量へのいちばんの近道なのです」食欲のメカニズム、仕組みとは?こう聞いて「どうすりゃいいの…」と思った人も多いはずだ。
一度でもダイエットをしたことがある人ならば、食べたいものをがまんする苦痛がわかるだろう。
だが、解決策はある。
工藤さんが続ける。
「食欲がわいたり収まったりするのは脳が大きく関与しています。
具体的には脳の真ん中に位置する視床下部が低血糖を感知して“お腹がすいた”と感じます。
逆に、食べ物で胃が満たされると視床下部の中にある満腹中枢がそれを察知して食欲を抑えてくれるのです」これらの脳の働きが正常なものであれば、食べすぎるということはないが、脳はしばしば“ニセの食欲”にダマされる。
「食べることによって“幸せホルモン”とも呼ばれる脳内物質『セロトニン』が分泌される。
この物質は快楽をもたらしてくれるため、その時の心地よさを脳が覚えてしまうと、空腹ではないのに“ニセの食欲”が沸いてくる。
これが食べすぎによる肥満を招く大きな原因なのです」(工藤さん)食欲には腸内環境が関係している?ヨーグルトも推奨ダイエットカウンセラーとして活動し、これまで約3000人のダイエットを成功に導いてきた細江啓太郎さんは“ニセの食欲”には3種類あるという。
「たくさん食べているのに、お腹がすく理由の1つとして挙げられるのは、体が必要としている栄養分が摂れていないこと。
その場合、どんなに食べても空腹が収まらないのです。
たとえば、ファストフードやインスタント食品をたくさん食べても、なぜか満たされない感じがしたことはないでしょうか。
そういったジャンクな食品のことを“エンプティーカロリー食品”と呼びます。
脂質や糖質ばかりがたくさん入ってきても、体に必要なビタミンやミネラルが足りていないので、体はいつまでも満たされないのです」(細江さん・以下同)必要以上に甘いものを欲する要因は、腸内環境の悪さにあった(写真/PIXTA)食欲が止まらない人のなかには「つい甘いものをつまんでしまい、やめられない」という人も多いだろう。
2017年に株式会社正栄デリシィが行った調査では、「ダイエット中に食べたくなる食品」としてもっとも多くの人が「甘いお菓子」を挙げている。
細江さんによれば、糖質を必要以上に欲する人は腸内環境が悪い場合が多いという。
「腸内に生息する悪玉菌が影響していると考えられています。
最近の研究によって、脳で感じる食欲にも消化管から放出されるホルモンが関与していることが判明しました。
これは腸と脳が互いに影響を与え合う『脳腸相関』という関係にあることを示している。
腸内環境が悪くなり悪玉菌の勢力が強くなると、そのエサとなる糖分を欲しがり、腸から脳へ指令として伝わる。
その圧力に負けてスイーツを食べてしまうと、さらに腸内環境が悪化し、さらに糖分が欲しくなるという、負のスパイラルに陥ってしまうのです」しかも、この衝動は体から突き上げるほど強く、意志の力で制御するのは困難だというから恐ろしい。
悪循環から抜け出すためにはヨーグルトや納豆など腸内環境を改善し、善玉菌を優位にしてくれる食べ物を積極的に摂るのがよいという。
太る原因には、ストレスによる食べ過ぎも?現代人が抱えるストレスもまた、食欲に直結する大きな因子だ。
「自律神経には、緊張時に優位となる交感神経と、リラックスした時に優位になる副交感神経の2つがあります。
ストレスがたまると、交感神経が優位になって体がこわばった状態になってしまう。
この状態はつらいので、人間は無意識のうちに副交感神経を優位にしてリラックスしたいと考えるようになります。
そのために手っとり早いのが、食べることなのです」「ストレスでドカ食いした」という話はよく聞くが、実は安らぎを求める行為だったことが、このメカニズムから見て取れる。
また、ストレスによる睡眠時間や質の低下も、必要以上に食欲を増進させてしまうことにつながる。
「ストレスを感じることによって幸せホルモンのセロトニンの量が減ることが明らかになっていますが、セロトニンは快眠に必要な物質であるメラトニンの材料でもあります。
つまり、ストレスがたまってよく眠れなくなると、メラトニンを作るためにセロトニンを増やそうと、私たちの体は食べ物を求めるようになります。
さらに脂肪が蓄積すると分泌され、食欲を抑制してくれるレプチンというホルモンも、よい睡眠が取れていないと分泌量が低下することがわかっています」(工藤さん)※女性セブン2019年6月20日号●脳をコントロールしてダイエットのやる気を維持!3つのコツ、8つのポイント、9つの言葉●達成しやすい目標を設定!脳をやる気にさせる8つのポイント●【脳科学ストレッチ】で痩せ体質へ!ぽっこりお腹や固まった筋肉も解消●食欲の原因は遺伝子「MC4R」!夜中に食べたくなる意外な理由も解説●食欲を抑える最強の方法|食べ物使った“エクササイズ”やお茶の活用も