【63歳オバ記者のリアル】母ちゃんの施設入所日、思い出した“スケベおじさん”が打った旨い蕎麦の話

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バツイチ独身のライター・オバ記者(63歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで”アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。

225回目となる今回は、母ちゃん(92歳)が施設に入所する、その日の話について。

* * *施設入所日、いつも通りの母ちゃん92歳の母親が老健(介護老人保健施設)に入所する朝、見送りに茨城の実家に顔を出した。

2、3日前、義妹から「施設の話をすると黙っちゃうんだよ。

行きたくないみたい」と聞いていたんで心配していたら、なになに。

「夕べ、りんご煮たんだよ。

食ってみろ。

うまいど」と、いつもの母ちゃん。

てか、2度の入院騒ぎがうそのように元気。

見たら大鍋に半分ほど入っている。

「この前の病院で出てうまかったから作ってみた」だって。

どれどれとひと口食べたら、甘さがちょうどいい!何かを作っている時がいちばん幸せそう畑、料理、手芸。

母ちゃんは何かを作っている時がいちばん幸せそうだ。

ちょうど1年前も帰ったら、切り干し大根の大量生産中だったっけ。

施設に入ると、手芸以外は何も出来なくなる。

そんな私の感傷もどこ吹く風。

母親は茶の間の定位置に座って、集まってきた親戚とお茶飲みが始まった。

そこへ弟の同級生で、老舗旅館の跡取り娘のYちゃんが、「今日は大吉だから」と赤飯を炊いて持ってきてくれた。

これがまた年寄り連中がざわつくほどのうまさ! 新しい門出に赤飯か。

いいなと思うけど私はしたことない。

「脚、良くして帰ってくるから」実家から老健まで車で10分。

「3か月なんかあっというまだっぺな。

まず、リハビリ頑張って脚、良くして帰ってくっから」母ちゃんはそう言うと、筑波山を正面に見る施設に入っていった。

親戚の人と握手なんかして気丈だけど、大きな大動脈瘤が3つあり、肝硬変を薬で抑えていることを思うと、何とも言えない気持ちになる。

完全面会謝絶で、これからは月に2回のリモート会話だしね。

見送ったあと向かったのは蕎麦屋見送ったあとは、同級生のE子と蕎麦を食べに山向こうの八郷町の「ふるさと食堂」へ。

今回は天もりそば(900円)にした。

すくってもすくっても無くならない打ちたての蕎麦に、ぷりぷりの海老天ほか天ぷらが5品ついて、この値段! 口にほのかに残る蕎麦粉の粉っぽさがたまんないわ。

しかしこの店の難点は、欲と愛想がないこと。

山を越えて来た客を、「ああ、今日はもう蕎麦が終わっちゃったんですよ~」と平気で追い返すの。

決めた量しか作らないのよ。

客もそれを承知で、入れたらめっけもんで来る。

意外と知られてないけど、茨城は北海道と並んで蕎麦の有数の生産地。

新そばのこの時期、どこで食べても美味しいよ。

顔も見たくないおじさんが打った絶品蕎麦といえば、どうしても記憶から追い出せないシーンがある。

今年26歳で結婚した姪っ子がまだ5歳の頃だから20年以上前の話。

当時、わが実家は子だくさんの大工の弟夫婦と、両親の三世代同居で、そこに絶え間なく客が来ていた。

「蕎麦ぶってきたど~」ある大晦日の夕暮れ、玄関から声がしてTちゃんがつかつかと台所に入ってきた。

大きな平な竹ざるを抱えている。

Tちゃんと言っても70過ぎたおじさんで、続柄は何かって? いやいや知らなくていいわ。

私が血族の中で、最も唾棄すべき、顔も見たくない人だ。

なにせ朝からうちの茶の間で、学齢の子供のいる前で、あけすけな夜の”手柄話”をするんだよ。

私はチラリと聞いただけで席を立って、それきりガン無視。

あいさつすらしなくなった。

そのTちゃんが打った蕎麦なんか汚らわしい、誰が食えっか!と言いたいところだけど、Tちゃん、スケベと同じくらい食通でも知られている。

キノコ狩りの名人で自分で獲った鰻や魚を専用の包丁でさばく。

その包丁だって手製だったりする。

ダイニングテーブルに大ざるを置いて、Tちゃんは茶の間に消えた。

そのすきに、白い布巾をそっとめくったら、細くて白っぽい茹で蕎麦が小さく巻かれていて、ザルいっぱいに盛られている。

そのキレイなこと! 思わず数本つまんで口に入れた。

また入れた。

ハサミにした指が、ザルと口の間を忙しく往復して止まらない。

「美味しいの?」いつの間に来たのか、5歳の姪っ子が私の盗み食いを見て、マネをした。

「ん!?」と言うとまたザルに手を伸ばした。

「どした?」Tちゃんが背後から聞いてきた。

「何もつけなくてもうまい」と正直に言うと、「つなぎに使ういい小麦粉をみっけたんだよ」という。

思えばTちゃんと会話らしい会話をしたのはこの時が初めてだ。

Tちゃんは下卑た話をするときとまったく別の職人の顔をしていた。

おじさんが来ても家には誰もいないあれから月日が流れ、すっかり老いたTちゃんはもうひとりでわが家に来ることもないし、来たところで誰もいない。

大工の弟は実家から出たのち、3年前に病気で亡くなった。

父親も同じ病で亡くなり、ひとり残った母ちゃんも施設に入った。

さて、東京に帰るか。

小山駅、上野東京ラインのホームの立ちそばをのぞいたら、「新メニュー 鶏皮煮こみそば」だって。

寒い中、食べたらうまいに決まっている。

ああ、これが入るスキのないお腹が恨めしい!オバ記者(野原広子)1957年生まれ、茨城県出身。

『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。

同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。

バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。

一昨年、7か月で11kgの減量を達成。

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