【63歳オバ記者のリアル】エーゲ海で出会った夫婦と、37年ぶりに「奇跡の再会」
バツイチ独身のライター・オバ記者(63歳)が、趣味から仕事、食べ物、健康、美容のことまで”アラ還”で感じたリアルな日常を綴る人気連載。
239回目となる今回は、「数奇な出会い」について。
* * *「私のための演奏会」を開いてくれたのは…わが秋葉原の自宅から原チャを乗り出して、ひとつ角を曲がったら、大きな橋、小さな橋を渡って、どこまでもまっすぐ走って約40分。
N氏(66歳)がご自宅で特技のギター演奏を聴かせてくれるというの。
「この曲なら暗譜しているから、どれでもどうぞ」って100曲ほどの曲名が書かれた紙を渡されたんだわ。
クラシックからアニソン、ラテンにハワイアンと、なんでもござれ。
私だけのための演奏会に大感激なんてもんじゃないわよ。
しかし63年生きてきて、N氏ご夫妻ほど数奇な出会い方をした人っていたかしら。
初の海外旅行、エーゲ海のシフノス島でNさんと知り合ったのは1983年、エーゲ海のシフノス島でのこと。
シフノス島は池田満寿夫が監督をした映画『エーゲ海に捧ぐ』のロケ地になった島、ということを知ったのは、帰国してしばらくたってからでね。
初めての海外旅行ではしゃいでいた私と元夫は、アテネの旅行会社のお姉さんに、「エーゲ海の島に行きたいんだけど、あなたのいちばん好きな島はどこ? そこに行く」と言って決めたのよ。
無謀と言えば無謀だけど、当時のガイドブックに島の情報はほんの数行だけだし、加えて一か八かはもとから大好物。
てか、元夫とは安い飲み屋で知り合い、初めてのデートは船橋競馬場。
今思えば、山っ気だけで結びついた2人だったのよね(笑い)。
そんなわけで結婚は4年で破綻したけど、まだ離婚など思いもよらなかった日のこと。
私と元夫は、アテネから昼過ぎに船に乗って、半日揺られてシフノス島に着いたわけ。
土だけの裸山が連なる島に、白い建物、青い窓、青い空。
バスの中で日本人夫婦に遭遇「こんなところまで来る日本人はいないね」と言いながら、島の港から中心街に向かうバスに乗り込んだら、真後ろから日本語が聞こえてきた! それがNさんご夫妻だったの。
Nさんたちは、島巡りをする計画。
私たちはいったんアテネに戻り、飛行機でイスタンブールに行く予定。
エーゲ海の島で一緒にお酒を飲んで右と左。
それきりのご縁だと思っていた。
シフノス島では3泊。
朝は海辺を散歩して、昼は原チャリを借りて島巡り。
今見るとスウェットの上下もカーリーヘアもおかしいけど、当時は誰も笑わなかったのよ。
それから8日後のこと。
私たちは、アテネ市内観光のシメにアクロポリスの丘に登ったんだわ。
道に転がっている大きな大理石に気を取られながら坂道を歩いていたら、頭上から「ウソッ!」。
顔をあげたらNさんご夫妻がいるではないの。
アクロポリスを見終えて下りてきたんだって。
「まぁ、まぁ、まぁ。
ホテルにお風呂入りに来てくださいよ」とNさん。
私たちはイスタンブールから往復1000kmのタクシーの旅はしても、宿は安けりゃいいという考え。
よほどみすぼらしかったのね。
げんに久しぶりに湯船に入ったら、見る見るお湯が黒ずんできたんだから、どんだけよ。
37年後、フェイスブックがきっかけで”再再会”その後、会社員の夫は帰国して、私はアテネから船に乗ってアドリア海を北上。
イタリアはヴェネツィアから入って、ひとり鉄旅をする計画で意気揚々。
だったのに、翌日にはパスポートを紛失。
さあ、どうする。
どうにもならない。
居場所といえば、フリーパスを持っていた電車の中。
で、北イタリアから南のナポリへ夜行列車で行き、カプリ島の青の洞窟へ向かう船の中で、どん底の顔がこれ。
おっちょこちょいの見本のような私が、どうにかカンレキ過ぎまで生きながらえてきたのは、奇跡としかいいようがない。
帰国してすぐに東京で一度か二度会ったけど、それっきり。
奇跡といえば、37年ぶりにN氏と”再再会”をしたのはSNSのおかげ。
たったひとりだけ、共通の知り合いがいたおかげで、切れたと思っていたご縁がまたつながったというわけ。
聞けばNさんは10年前に外資系企業をリタイヤして旅三昧。
コロナ禍になる前は、N氏は相変わらずリュックを背負って、一泊2000円の安宿に泊まりながら、数か月単位で旅をしていたとか。
N氏が弾くギターを、バードウォッチングから戻ってきた私と同じ年の奥さまが、渋い顔で聴いて「昔はもっとうまかったのよ」と言う。
私には完ぺきに聴こえる『アルハンブラの思い出』に、ダメ出し?(笑い) でも思えばこれが長年連れ添ってきた夫婦なんだよね。
ギリシャで知り合ってから今まで37年。
わが人生に悔いなし、な〜んてとてもとても言えたもんじゃない私は、N氏ご夫妻のやり取りがうらやましくて仕方がない。
これまで連戦連敗だった婚活を、またしてみようかな。
オバ記者(野原広子)1957年生まれ、茨城県出身。
『女性セブン』での体当たり取材が人気のライター。
同誌で、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。
バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。
一昨年、7か月で11kgの減量を達成。
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