【今週の読みたい本】是枝監督と英映画界の巨匠が語り合う『家族と社会が壊れるとき』など4冊
ステイホームの時間が増えたので、本を読みたいけれどどんな本を読んでいいのかわからない――。
そんな人のために今読んでおきたい4冊をご紹介。
映画『万引き家族』の是枝監督と、彼が師と仰ぐケン・ローチ監督との対談本や、ユーモアエッセイ、名作の新装版、鬼が題材の漫画など多ジャンルのものをピックアップしました。
【目次】【新書】『家族と社会が壊れるとき』是枝裕和 ケン・ローチ【単行本】『何がおかしい――新装版』佐藤愛子【文庫本】『今夜、すべてのバーで〈新装版〉』中島らも【コミックス】『鬼の子』ながしまひろみ【新書】『家族と社会が壊れるとき』是枝裕和 ケン・ローチ◆『万引き家族』と『家族を想うとき』の両監督。
変質してしまった社会と創作の源を語りあう『家族と社会が壊れるとき』是枝裕和 ケン・ローチNHK出版新書800円是枝監督が心の師と仰ぐケン・ローチ監督(1936年生まれ)。
2人には共通項が。「シリアスな社会性とユーモアの両立」だ。
でも違う部分も。
ローチ監督の怒りの矛先が明確(富裕層や資本家)なのに対し、是枝監督の描く理不尽は哀切の中に回収される。
国柄の差? 時代や世代の差? 対談に続く終章で近年のナショナル回帰に危うさを見る是枝エッセイは優れた時評でも。
家族と社会が壊れるとき(NHK出版新書)【単行本】『何がおかしい――新装版』佐藤愛子◆ニセ佐藤愛子、萩原健一、平沢死刑囚。
愛子さん、今日も元気に呆れたり怒ったり『何がおかしい――新装版』佐藤愛子中央公論新社1300円著者60代のユーモアエッセイ。
コロナ不況下、せめて空元気でも出してもらえれば、と。
驚くべきは全然古くないこと。
妻であり母だけど、女でもいたいという物言いに感じる不可解、思いやりとか優しさといった空念仏によって他者を裁く歪んだ人間性、昔の国会の野次には知性とユーモアがあったとも。
ご指摘ごもっとも! 勢いにシンクロし、元気がムクムク湧いてくる。
何がおかしい-新装版(単行本)【文庫本】『今夜、すべてのバーで〈新装版〉』中島らも◆記念碑的な“酒神は渇く”文学。
新装版の解説は「らもさん」と呼ぶ町田康『今夜、すべてのバーで〈新装版〉』中島らも講談社文庫740円2004年享年52で逝った著者39才時の作。
吉川英治文学新人賞を受賞した。
肝硬変一歩手前で緊急入院した小島容。
入院患者らが軽妙な関西漫才を繰り広げる中、主治医赤河と綾瀬少年の輪郭が際立つ。
赤河は“アルコールと文学者”という教養の素地を持ち、17才の少年はダダイストの詩集を読み演劇を愛す。
両者とも著者の分身。
町田氏が断酒経験を書かなかった解説にクスッ。
今夜、すベてのバーで(講談社文庫)【コミックス】『鬼の子』ながしまひろみ◆みんな寂しい。
でもみんな“けなげ”。
オールカラーで1・2巻同時発売『鬼の子』ながしまひろみ小学館全2巻各1500円“鬼ブーム!?”と思いきや、こちらはデジタル配信サイトで人気を博した連載コミック。
一本角の小鬼くん。
鬼の金棒に似た道具(バット)を持つ高校生に付いていくと、そこは野球選手だったお父さんが失踪中の母子2人の家。
袋綴じのモデルもするお母さんにうちの子になりなさいと言われ、通い始めた小学校でみんなと野球も始める。
ウルッとくる場面多々。
漫画っていいなあ。
文/温水ゆかり※女性セブン2021年1月28日号●【今週の読みたい本】川上弘美さんの季語にまつわる俳句エッセーほか年末年始におすすめの4冊●【今週の読みたい本】14年間埋もれていた角田光代さんの傑作小説『銀の夜』など4冊●【今週の読みたい本】ジャルジャル福徳秀介の小説デビュー作など4冊